2011年9月1日木曜日

東大生はエスノグラフィの構造化に取り組んだ.第2回i.schoolワークショップ⑥


エスノグラフィが終わったところで,
そこからアイデアを創造するための下準備のための構造化を行う.
そのために使うのがこれから説明する"DKF"だ.
D=Downloading, K=Keyword化,F=Framework化
の3ステップである.

DAY 6, 7, 8 ETHNOGRAPHY FRAMEWORK "DKF"
目的:エスノグラフィからアイディアを生むための構造化
手法:ダウンロード,キーワード化,フレームワーク化
ステップ①「ダウンロード」
ステップ②「キーワード化」
ステップ③「フレームワーク化」

ステップ①「ダウンロード」
ここでは各自行ったエクストリームユーザへのエスノグラフィを全チームに共有した.

共有することは前回の2回に分けて紹介したようなことだ.
①その人のいままでの経歴
②その人とゲームとの接点
③実際にゲームをやってもらったときのこと

すでにエスノグラフィをやった日の後にデブリーフィング(振り返り)の時間で,
全てポストイットに書いてしまっているはずであるので,
それをチームに紹介しながら大きな模造紙に貼っていこう.

また撮影した写真や動画の気になるショットも印刷し,それらも貼ると良い.

ここで重要なことが一つある.
前にも書いたがポストイットはしっかりカラーコーディングすること.
例えば今回のエスノグラフィでは,
事実(FACT)は黄色
発見(FINDING)はピンク
アイディア(IDEA)は青(これは無理にこの時間にやる必要はない)
でカラーコーディングした.

特に「事実」と「発見」を混合する人がいるが,
これはエスノグラフィを台無しにしかねない.

「事実」=実際に相手が言ったことやした行動
「発見」=相手が言ったことやした行動に対しての自分の「解釈」

これからアイデアの発想に至るときに,必ず元々の着眼点に戻る.
その元々の着眼点であった「事実」ほど強いものはないのである.

なぜなら私たちは時間が経つとついつい自分たちにとって良いように,
物事を解釈し始める危険性があるからだ.

だからこそ「事実」には自分たちの解釈が
入っていなようにすることが重要なのである.

<マイ・ポイント>
・聞き手は「発見」をポストイットに書け!
ダウンロードのコツはチームの誰かが発表をしているときに,
「発見」の色のポストイットに自分が感じたことを書いて貼ることだ.
実際にエスノグラフィを現場していると,
その場における先入観が強くなっている場合がある.
だからこそ初めて聞く聞き手の人たちは,
なにか新鮮に感じたらすぐにポストイットに書いてシェアしよう!

・情報が多ければいいというわけではない
エスノグラフィをはじめてやる場合,
情報量の多さに惑わされないように注意したい.
例えば今回は3名がノルマだったが,私の班では一人多く4名に.
さらに今回は全チームで共有することで,
さらに多くのエクストリームユーザの情報が手に入ってしまった.

それによってせっかくエクストリームユーザにインタビューしたのに,
それをうまく活かすのが難しくなったりする可能性があるからだ.
エスノグラフィに慣れるまでは(上級者は違うと思うが),
あまり多くの人へインタビューするのは必ずしも良くない.

ステップ②「キーワード化」
ダウンロードが終わったら,キーワード化に入る.
キーワード化はさらに2つのステップに分けられる.

i. 共通キーワード
ii. 対極キーワード

i. 共通キーワード
チーム内での「発見」のポストイットをグルーピングしていこう.
インタビューを行った人たち全てからの「発見」で貼り直すので,
一応どのポストイットがどのエクストリームユーザからなのかが,
簡単にわかると後々いいと思う.

グルーピングができたら各グループにキーワードをつけてみる.
キーワードの目標は5つから6つぐらいだ.

キーワードのポイントは,絵で描くこと!
もちろん文字も書いてもいいのだが,必ず「絵」を書くように努力するのだ.

良い例として,あるチームではエクストリームユーザには,
負けず嫌いで,困難にぶち当たっても諦めず上を目指していくこと様を
以下のような絵で描き,それを「螺旋階段」というキーワードをつけた.

ii. 対極キーワード
この共通キーワード化が終わったら,
さらに今度は対極するキーワードがないかみてみよう.

「このユーザにはあるけど,このユーザには正反対に近いことがある.」

という感じに対極キーワードを3,4つ作成しよう.
ちなみに私たちのチームであがったもののうち2つほど紹介すると...

・大事なのは能力の積分値か微分値
ゲームをやる方には,能力の積分値と微分値があるように私たちは感じた.
積分値とは,例えばゲーム内のプレイ時間やクリア数の蓄積によって得られる
成績や強い武器の所持などで自分の能力を証明する方のことである.
これはアプリゲームをやっている方やモンハンをやっている方に見られた.

一方で,微分値とはそのときの能力の高さが大事であるとし,
いままでの蓄積(少なくともデータとして残すこと)には興味はあまりない方.
これはぷよぷよユーザとマインスイーパーの両方に当てはまっており,
いまの成績の蓄積はどうでもよく,いかにその瞬時に能力を出せるかが共通していた.

・ゲームは自分にとって文学であるか,競技であるか
ゲームを深く楽しむ人には2タイプいるのかもしれないと私たちは考えた.
文学のように味わう人と,競技として競争に燃える人.
ぷよぷよユーザは文学を楽しむ人ように,
ぷよぷよの消える様が美しいと語っていた.
一方でマインスイーパーの方は,
とにかく最速を目指してひたすらやり続けていた.
そしてゲーマーではない人はこのどちらにもあてはまっていないことが多い.
これは面白いと感じた.

<マイ・ポイント>
・「発見」はできるだけ多く書いておけ!
このキーワード化は案外難しいという印象を私は受けた.
その理由として「発見」のポストイットを十分に書かなかったことがあると思う.
したがって,ダウンロードの際に例え「発見」が小さいことのように感じても,
遠慮なくたくさん書くことが大切だ.

ステップ③「フレームワーク化」
最後のステップが「フレームワーク化」だ.
さきほど作成した対極キーワードをフレームワークで表してみよう.

私たちのチームでは2軸で考えることが多かった.
1つの軸には,世界観を重要視するか・コミュニティの重要視するか.
もう1つの軸には,上記で説明した微分値か積分値かである.

参考として他のチームでは以下のような2軸ではないフレームワークもあった.



このステップではいままでのステップを総合的に扱うことになるため,
いままでのステップがうまくできていない非常に困難になる可能性がある.
また,この次のアイデア化ではこのフレームワークこそが重要な軸になるため

いかにこのフレームワーク化がうまくできるかが,
今回のワークショップのコアと言っても過言ではない.


<マイ・ポイント>
このように困難なステップであるからこそ,
以下の3つのポイントはぜひおさえてもらえるといいと思う.

・一発でできると考えず,収束と発散を恐れないこと
一度フレームワークを作成すると,
ほとんどの人はそのままそれでアイデア化に進むだろう.
なぜならみな収束したいからだ.(少なくと工学系の人は)
でもそれだとある視点に捕われている可能性が多いにある.
だからこそ,もう一度発散させる方向へ最低一度はもっていきたい.

・ステップ①と②に戻る勇気をもつこと
ステップ③に入ってしまうと,もうステップ①と②には戻りたくなるかもしれない.
しかし,発散するためにどうしても視点を変える必要があれば,
一度勇気をもってまたステップ①と②に戻ること.
そのためにもステップ①と②を完璧にするまで時間をかけるのではなく,
ステップ①から③までのサイクルを短くするのが必要だと思う.

・フレームワークはシンプル・イズ・ベスト 
いいフレームワークというのは,だれが見てもすぐわかるもの.
そうすると熟練者でない限りシンプルにした方がいいと思う.
まずは2軸ぐらいでやるのがベストなのではないだろうか.

以上がアイデア化のための下準備である"DKF"の説明だ.
私としてはおそらくこの"DKF"こそが今回一番重要であると感じた.

なぜならここをいかに上手く・早くできようになれば,
フレームワークをみながらアイデアを出すことができ,
例え自分が天才や直感が強くない方であっても,
よりイノベーティブなアイデアを出すことができるようになるはずだからだ.

だからこそ今回の"DKF"は必ず自分のものにしたいと思うし,
今後も訓練しなくてはならないと思う.


東大生はアイデア化するために手法を知った.第2回i.schoolワークショップ⑦へ続く...



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