2011年8月29日月曜日

東大生は「エスノグラフィ」とはなにか考えた.第2回i.schoolワークショップ③


ここからは第2回ワークショップの中心となるフレームワーク,
「エスノグラフィ」に入る.
3日目はまずエスノグラフィの理解とその事前準備だ.

DAY 3 ETHNOGRAPHY "PREPARATION"
目的:エスノグラフィとはなにか知る,インタビューアを決定
手法:エスノグラフィ
ステップ①「エスノグラフィの理解」
ステップ②「インタビューアの決定」
ステップ③「観察ガイドの作成」

ステップ①「エスノグラフィの理解」
エスノグラフィがなにか,みなさんはご存知だろうか?
今回のファシリテータの田村さんは以下のように定義されていた.

エスノグラフィの定義
「エスノグラフィーとは、古いレンズに頼らず、
人々の生活への共棲・共感を通じて時代の風景を描き出す企てのことです。」

定量調査の場合は,例えば家の調査だとすれば家をパターンに当てはめて
たくさん存在するものに着目し「こういう家が理想だ」と導きだす.
一方でエスノグラフィはこの定量調査のアナロジーにある.
ということだ.

エスノグラフィ手法の実施目的は,
対象者の実際生活や文化の中で観察や相互作用を行うことにより,
彼らの生活様式を理解することである.

彼らの生活様式に入るだけで,未知の発見はたくさんあるものだ.
ただし,決して知りたいことを知るために行うのではないことに注意したい.

そしてエスノグラフィを行う際は,

共感性⇔自己主張的,批評的⇔受け身的でのマトリックスを意識すること.
インタビュー時の姿勢として求められるのは,共感的であり批評的でいることだ.

一見矛盾するように思えるが,実現可能であり,目指す姿勢である.

<マイ・ポイント>
・仮説をもってエスノグラフィをしてはならない
仮説をもつことは大変重要なことである.
しかし,エスノグラフィを行う際にはそれは一旦頭から消そう.
エスノグラフィは仮説検証のために行うわけではない.
いままできづかなかった発見のためにしているということを忘れてはならない.

ステップ②「インタビューアの決定」
エスノグラフィがなにかわかったところで,対象者(インタビューア)の選定に入る.
しかし,エスノグラフィは観察を基本とするため時間がかかってしまい,
たくさんの人を網羅的にカバーするのにはむいていない.
そこで「エクストリームユーザ」をインタビューアにするのだ.
エクストリームユーザとは,
簡単に言えば一般的なユーザから極端に違う特徴をもった人.

彼らに着目することで,私たちが普段見逃している視点を気づかせてくれたり,
またや従来の視点を壊してくれる可能性があります.

今回私たちのチームでは以下の4名をエクストリームユーザとして
インタビューすることを依頼した.(各チームの目標は最低3名)
・ぷよぷよで全国レベルの実力をもつ東大院生
・マインスイーパークリア速度で世界一の記録を女子校生(当時)
・全くゲームをやっていなかったが,最近アプリゲームにハマった主婦
・8年間同じゲームをやっているサラリーマン

<マイ・ポイント>
・エクストリームユーザは多種多様にする
例えば3名にエスノグラフィを行う場合,
3人中2人がヘビーゲーマーでは調査結果の幅が狭まってしまいもったいない.
また,2名の共通点ばかりに目がいきがちになってしまう恐れがある.
したがって,こういうときこそ
・ヘビーゲーマー
・人生で全くゲームをやったことない人
・将棋や囲碁をやる人
などにしてエスノグラフィを行うと面白い調査になるのではないだろうか.

ステップ③「観察ガイドの作成」
最後にエスノグラフィの実施手順である観察ガイドを作成する.
観察ガイドとは,一連の質問やトピックをまとめたものであることが多い.
非制約型インタビューの項目と,
観察のため の指針を組み合わせたものと思ってもらえると良い.
ポイントはあくまでも「ガイド」であるということ.

作成手順:
聞くべきこと,見るべきものを要素出し,各要素を流れに構成しながら,
質問文を大まかなセクションで設定し,所用時間についても記述する.

参考として私たちのチームで作成したものを記載する.

<おまけ>エスノグラフィのTips
最後にエスノグラフィ中にぜひ覚えておきたい5つのポイントをまとめる.

I.「もし○○だったら?」は最後
エスノグラフィをする際に質問として「もし○○だったら?」
という質問は一番最後にすべき.
はじめの方にしてしまうと,普段考えていないことを言ったり,
その後の話すことに影響を及ぼす可能性があるからだ.

II. エスノグラフィのノートの取り方
「発言」「行動」「気づき・発見」を分けて書くこと.
ノートを真ん中で分けるとか.””を使うなどをする.

III. 役割分担は事前に決めておく
インタビューアは事前に決めておく.
でないとインタビューされる人は誰と話せばいいのかわからなくなる.

IV. エスノグラフィ時の写真撮影
そのものがどう生活者とどう関係しているのか?
そのものの場所がどこにあったのか?わかるように撮影すること.
特に接写で撮影する場合はものだけに注意がいってしまうので注意.

V. デブリーフィングは終わった直後に
エスノグラフィを行ったチームで終わった直後に必ず振り返り(デブリーフィング).
これをやるとやらないとでは,天と地の差だ.
またそれを行う際には,カラーコーディングしたポストイットで行うといい.
例えば今回のエスノグラフィでは,
事実(FACT)は黄色
発見(FINDING)はピンク
アイディア(IDEA)は青
でカラーコーディングした.

以上でエスノグラフィの準備の説明は終了だ.
他にも細かいポイントはたくさんあるが,
今回は最低限おさえておくべきものにとどめた.

次回からはいよいよエクストリームユーザに対するエスノグラフィに入る.

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