2011年5月25日.世界的デザインファームとして有名企業の米国IDEO社.
そのCEOであるTim Brown氏と同社の社員の方を東京大学i.schoolに迎え,
i.school生とのround table talk(ディスカッション)を行った.
東日本大震災の後変わったことはなにか?
デジタルライフの周辺では今何が起きているか?
2021年の日本はどうなっているだろう?
を中心にIDEOから学生に問題提起がされ,
逆に学生からIDEOに対しては
なぜIDEOは再び日本にきたのか?
IDEOの理念とはなにか?
i.school生に期待すること?
といった逆質問をする白熱したディスカッションが1時間半にわたって展開された.
今回はまずIDEOからの問題提起とそのやりとりについて紹介する.
ディスカッション全てを書き下ろしていないので,参考程度にしてもらいたい.
ディスカッションは全て英語で行われたため,ここでは日本語に訳して書こうと思う.
IDEOとi.school生でどういったディスカッションが展開されたのか,
その雰囲気が伝われば幸いだ.ディスカッションでは社員も学生も複数人いる.
個人的にはIDEOがどのように質問しているのか?に着目すると,
ものごとの着眼点なども学べたりするかと思う.
また自分がその場にいた場合IDEOからの質問にどうか答えるかを,
考えてみるのもいいかもしれない.
トピック①「東日本大震災の後変わったことはなにか?」
>IDEO社員
震災のあとみなさんはどう日本を感じていますか?なにか変化はありましたか?また,君たち自信はどう変わりましたか?
教育の未来などは変わりましたか?ポジティブ?ネガティブに?
>i.school生
・ 震災前までは日本人は自分の国に対してネガティブな思いが強かった.
それはGDPの順位低下や様々な国際的地位が下がっていく一方であったからだ.
いつしか日本に対して暗い気持ちをもっていたのではないだろうか.
しかし,震災時に日本では窃盗などの治安の悪化などがなく,
危機的な状態であったのにかかわらず落ち着いてお互いを助け合う精神があった.
こういった日本人の高い危機対応力や文化には世界から非常に高く評価された.
これからは再び日本人は自分たちの文化や強みに自信をもつのではないだろうか.
・ もう日本人は政府を信じることができなくなった.
これから日本人はなにが正しくてなにが正しくないかを
個人で判断しなくてはならないし,できるようになるようになるのではないか.
・ いままで水は無限にあると思ってた.しかし,水は無限になかった.
実際にボランティアに行ってこれを強く感じた.
・私は自分が日本人だと強く感じるようになった.
ワールドカップぐらいの国として一致団結することはなかった.
そういった意味で自分が日本人として日本になにができるか考えるようになった.
・ 日本のエンジニアは非常にショックを受けた.
工学とはなにかもう一度再認識する必要があるように感じた.
・ 政治や日本の将来についてはいままであまり人と話すことはなかった.
でもいまは友達や家族で話すことが増えた.
・ 元々が明るすぎた.普通ではなかった.本来夜が暗いことは当たり前なはず.
ヨーロッパはそうだ.日本もやっといま普通になったのではないかな.
いままで明かりを使い過ぎていたのではないかと思うようになった.
必要のない使い方をしていたのではないか.
もっとソーシャルネットワークについて考えるようになった.
また情報の取り方も変わりました.いまではもうスマートフォンは手放せません.
>IDEO社員
きみたちは震災に対する変化の見方は世代によって違うと思うか?
>ティム
君たちはもっと自分たちに自信を持ち始め,政府に対する信頼は失われたといった.
これはどういった機会を生むのか?
たとえば、ソーシャルネットワークの導入が進んだのがいい例だ.
あと他に生まれた機会はあるのか?
>IDEO社員
日本人はみんな自分たちのことを日本人として考えるようになった.
将来のことを考えるようになったとみんないっていたが,
でもこれっていつまで続くと思う?
デザイナーの考えだと,どういうチャネルが生まれた?
どういうシステムをデザインできるか?
日本人が自分たちの日本を助けたいという情熱をどうやって活かすことができるのか?
>i.school生
たしかに人間は時間が経てばみな災害について忘れてしまうかもしれない.
しかし,今回は特殊だと思う.
なぜなら電気不足問題などで広い範囲,
かつ長い間震災について考えさせられることになるからだ.
>ティム
twitterで情報収集すると言っていたが,なにが正しいかはどうやってわかるの?
偶然なの?誰かがフィルターでもかけているの?
なければそれはビジネスチャンスになるんじゃない?(笑)
SNSを使うようになったっていってたけど,
こういったツールが普及するためにはブレークスルーがあると思う.
そしてマーケットにどういった影響を与えたかは着目したほうがいい.
>IDEO社員
Twitterでどこから一番正確な情報を手に入れることができるのか?
>i.school生
プロフェッショナルをフォローすることで手に入れるようになった.
あと情報源の重要性が増し,みんなしっかり情報源を確認するようになった.
>IDEO社員
人々がtwitterを通じてプロフェッショナルの意見に聞くようにになったのは面白い.
プロフェショナルはいままで一般人にとっては遠い存在だった.
いままではつながりを得るのは難しかったのだ.
しかし話しを聞いている限りでは,
プロフェッショナリズムがコモディティ化している気がするね.
>IDEO社員
震災後に政府における信頼が下降していうというが,
どうしたらまた信頼を回復することができるだろうか?
なにかいい方法はあるだろうか?日本政府はなにをすればいいだろうか?
>i.school生
・ 政府機関の人々がもっと身近にいればいいのかも.・ 政府が公認のプラットフォームを作るというはどうかな.
>IDEO社員
もっと具体的にいうと?ストーリーとして話す場合はどうなる?ストーリーで具体例をあげてもらいたいね.
トピック②「2021年の日本はどうなっているだろう?」
>ティム
10年後.2021年の日本の生活はどう変わっているのか?みんなは起業して,上場に成功していることろだな.
そのときみんなはどこに投資しているかな?大きなイノベーションはなんだろう?
どういった技術?文化?政府?日々の生活とはどのように違っているかな?
>i.school生
・プロフェッショナル化が進む.いままでは「○○企業の田中さん」という言い方が主流で,
人々は企業に対する帰属が高いのではないかな.
一方で,10年後は「田中さん」という個人における重要度は増す.
・クリエイティブ教育がないとプロフェッショナル化は育たない.
そういう意味でクリエイティブ教育が今後より促進させる.
日本の教育は基本的にインプットばかりだ.
もっとみんなで議論したり,もっとアウトプットする仕組みが必要になっていると思う.
>ティム
アメリカでも,ヨーロッパではすでに似たようなことが起きているね.アントプレナーシップがあちらこちらで叫ばれるようになってきている.
新しい教育方式が世界中で起きている.これはグローバルなことかもだね.
>IDEO社員
ここのグループは世界を視野に入れた発言が多い気がする.
少し疑問に思ったのだが,最近日本人学生が海外留学しない.
世界にでていかないという内向き思考があるっていう記事を読んだ.本当なのか?
>IDEO社員
いまからみんなに$1milliomをあげるとしたら,
みんなは日本を助けるためになにに使うか?
>i.school生
・ 超高齢化社会になるからヘルスケアかな・ 政府はもう信用できないから地域発展かも
・ 震災によって省エネなどの分野で多くの最先端技術を生み出すことができる
・ 課題先進国の分野に投資したい
>IDEO社員
政府の権力の分散化は世界でどこかであるか?
>IDEO社員
そこの地域は税を変えたり,法律を変えたりすることができたらおもしろい.パーソナルファブリケーションがあれば面白い.ファブラボを構築するだろう.
日本の昔の伝統的文化や技術は世界的に有名だ.
そういった意味でファボラボによってこれが促進されればおもしろいかもね.
>ティム
メイド・イン・ジャパンの重要性を活かせる感じがする.
日本でデザインされて世界へ輸出するとか.
>IDEO社員
日本はこれからもっとグローバル化が進むと思いますか?
>i.school生
・しないと思う.結局はもっと孤立していくと思う.・すると思う.世界的に圧力があるからせざるを得ない.
>ティム
そもそもグローバル化という定義が変わったりしないかな.
SNSによってよりローカライゼンショーンが進むのかな.
>IDEO社員
未来のソーシャルネットワークはどう変わると思う?あまり変わらないと思う?
>i.school生
・ もっとビジュアル的なイメージや,音を使ったこと.・ グローバルになりすぎている.もっとローカルに適応したものの重要性が増す.
・ フェイスブックとtwitterもmixiも全部同じのプラットフォームになると思う.
・ 手書きの重要性が増すと思う,
>IDEO社員
次にデジタル化になるものはなにかな?
>IDEO社員
「デジタル化」 かける 「超高齢化」 どうなる?
以上がIDEOから学生に対して問いかけられやりとりした内容だ.
ディスカッションを通じて感じたのは彼らがよく,
「いままで○○だったことが,これからは○○になる」
ことを何度も何度も聞いていたことだ.
そして,それに具体性とストーリーを取り入れることを求めた.
i.schoolでもよく同じ考え方をワークショップでするが,
やはり日々こういった思考をすることが,
未来に起きるかもしれない兆しをつかむのに大事なことなのかもしれない.
これが私がIDEOとのやりとりで一番感じたことだ.
ちなみにトップ画像のポストイットは,
IDEOの社員がディスカッション中にメモをとっていたポストイットだ.
「いままで○○だったことが,これからは○○になる」
ことを何度も何度も聞いていたことだ.
そして,それに具体性とストーリーを取り入れることを求めた.
i.schoolでもよく同じ考え方をワークショップでするが,
やはり日々こういった思考をすることが,
未来に起きるかもしれない兆しをつかむのに大事なことなのかもしれない.
これが私がIDEOとのやりとりで一番感じたことだ.
ちなみにトップ画像のポストイットは,
IDEOの社員がディスカッション中にメモをとっていたポストイットだ.
次回は学生からIDEOに対してされた逆質問について紹介する.
日本,そしてi.school生に期待すること」IDEO社CEO Tim Brown × 東大i.school へ続く
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