今年のはじめに韓国KAISTで開催(2010年1月23日~25日)された,
Young Investigators’ Forum on Culture Technology 2011(Young CT 2011)
にi.schoolから派遣されたので,その報告をまとめたいと思う.
まず本プログラムYoung CT 2011の目的は,
世界に存在する様々な社会問題をみつけ理解.
そしてその問題に直面しているユーザー・利用環境に
適切な技術(=Appropriate Technology)であることを前提に
ソリューションを提案する.
ではその適切な技術を導入するためになにを考えるべきか.
今回ワークショップのはじめに,
彼女はインドにおいて,
現地に適した携帯電話のデザインプロジェクトに関わった経験があり,
それがどのようなプロセスで行われたのかを共有してくださった.
その経験から私たちがユーザー・利用環境に適切な
技術(=Appropriate Technology)を考えていく上で,
考慮しなくてはならない「4A」がポイントとして以下をあげた.
①Adoption(適応)
②Appropriation(適切)
③Affordability(手頃な価格)
④Aspiration(願望)
今年はこの前提に加えサブテーマとして,
”Play for the Good”(=遊びで社会問題を解決せよ)が与えられた.
サブテーマでもまだテーマが大きすぎる気がするが...
サブテーマである”Play for the Good”(=遊びで社会問題を解決せよ)を
参加者に理解してもらうために,
アフリカにおけるプレイポンプの失敗事例からの教訓についてレクチャーがあった.
まず問題の背景として南アフリカでは水を得るために,
年間400億時間もの時間を女性や子供が費やさせねばならない.
そこで"PlayPump® Sysytem"は,
いままで設置されていた井戸の手こぎポンプの変わりに,
こどものメリーゴーランドを回す「遊び」を動力源としたくみ上げポンプを作った.
これによって遊ぶものがないアフリカの子供たちを楽しませるとともに,
くみ上げる労力から解放することに成功したのだ.
http://www.envirogadget.com/alternative-energy/playpump-children-powered-water-pump/
この途上国の問題を解決する革新的手法に世界は魅了され,
当初は政府機関,財団,企業からの多大なる寄付が集まった.
みなはこの新しく生み出された手法が成功すると確信していた.
しかし問題はその3年後,
各地に設置されたプレイポンプは稼働しておらず,
このプロジェクトは失敗に終わってしまう.
すばらしいと思われていたこの手法だが,
なぜ失敗してしまったのか?
その理由として以下が紹介された.
① 故障したときにアフリカの利用者はそれを修理する方法を知らなかった
② 当初はプレイポンプを回すことは「遊び」=「楽しい」だったが,
途中からそれが「労働」=「楽しくない」に変わってしまった
③ そもそも現地の人たちは既存の手でこぐくみ上げポンプに,
そこまで不満を持っていなかった.
原因は様々だと思われるが,
結局大きな問題はこのプレイポンプが
ユーザー・利用環境に適切な技術(=Appropriate Technology)で
あることを十分に考慮していなかったことだ.
※ちなみにプレイポンプが適切な技術であることを,
十分に考慮していなかったこと以外にも,
以下の点で導入の過程にも問題があったと私は考えている.
❶プロジェクトは新たにプレイポンプを設置することを重視し,
設置後のメンテナンスのことを重視していなかった.
❷十分なプレイポンプの実地テストがされずに本格導入が進んでしまった.
以上の紹介事例を参考に,
私たちもプレイポンプのような「遊び」によって「社会問題を解決」すると同時に,
プレイポンプが犯した間違えをしないように,
Appropriate Technologyを考慮した
アイディアを立案することをプロジェクトとして与えられた.
今回参加している学生約25名のバックグランドについてだが
KAIST,英国のRCA,ケンブリッジ大学,
東京大学i.school,ソウル近郊の大学からの参加があり,
専攻はKAIST大学のCulture Technologyの学生が一番多く,
その他の学生はコンピュータグラフィックスからビジネスまで.
学年も修士課程の学生が多く,比較的年齢が高い層の参加者であった.
このように非常に多様性が富んだワークショップYoung CT 2011.
参加学生は1組5人のチームに分けられ,2泊3日のグループワークを通じて,
最終日にコンセプトプレゼンテーションを行うのであった.
後編では実際ワークショップの結果についてまとめたいと思う.
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