フィールドワークで実際にサラダボウルで農作業をやるのかと思いきや,
農業生産法人サラダボウル代表の田中さんから,
「1日くらいの農業体験では返って農業に対して勘違いを生むので,
代わりに農場の倉庫やグリーンハウスの見学してもらいます.」
田中さんのポリシーとして,農作業一日体験はまずやらないらしい.
そして本当に体験したい人がいて体験をさせる時には,
誓約書を何枚も書かせて目的を確認をするとのこと.
イベント的な研修は誤解・トラブルを誤解生むことが多く.
一緒に働く人ではなく,お客さんとして農作業しに来てしまうからだ.
さて,さっそく見学することになった農場の倉庫やグリーンハウス.
そこには,見当たることろのもの全てに作業の効率化を進める工夫がされていた.
いくつか述べると…
①全ての道具に置く位置にラベルを張る
倉庫には,道具が置かれるべき位置の全てにラベルが貼ってある.
これによって誰であっても,場所で迷うことがなくなる.
車の駐車位置までテープで示すまでの工夫がされている.
②従業員の手作り道具
倉庫の道具には従業員によって手作りで作られた多くの道具があった.
そこには従業員が考えだした作業効率を上げる工夫も積極的に取り入れられていた.
③トラクターの機種はバラバラ,ほとんどが中古
B農家:「隣のA農家がこの間最新のトラクター買ったらしいぞ!」
C農家:「では,うちは来月出る新車を買おう!」
っていうこともあるらしい農業の世界で,
サラダボウルのほとんどのトラクターは周りの農家から譲り受けた中古が多い.
したがって,機種もバラバラ.これで安く済むと同時に故障したときのリスク分散にもなる.
このようにたくさんの工夫がされていた.
そしてどの工夫もとても小さくて,地味ではあった.
しかし,小さなのミスや手際の悪さが重なると農業効率に大きな影響を与える.
非常に安いものをたくさん作る農業という仕事だからこそ,
こういった一つひとつの農作業の効率化が大事だということだ.
「欠品をいかにつぶすか」がいかに重要か.
欠品してつぶれる会社はなかったが、作りすぎて倒産することはあった.
農業もこれとなにも変わらない.
田中さんが銀行員だった頃の経験がこうやって農業に活かされている.
フィールドワーク後に再び田中さんのレクチャーを受けた.
そして,強い農業現場を構築するための10のキーファクターの紹介があった.
①マーケットイン
②生産工程管理/品質管理
③コストマネジメント
④プライスメイキング
⑤見える化
⑥人材育成
⑦適正規模経営
⑧事業ポートフォリオ戦略
⑨情報管理システム
⑩高付加価値化
フィールドワークをする前では,上記を当たり前として感じていた自分がいたかもしれない.
どれも言葉だけみればかっこいいかもしれないが,
どれも非常に地味な作業の積み重ねでしか成立しないことを忘れてはならない.
フィールドワークで現場を見ているからこそそう思うことができるのだろう.
誰でもできないことをやっているという企業は,世の中にそう多くはない.
実はどの企業も地道なことをずっとやって,極めているだけなのだ.
なぜ日本の企業が強いのか.
それは誰もが面倒と思う作業を地道に積み重ねてきたからなのではないだろうか.
そしてこういった地道な努力はそう簡単には外部に真似はできない.
トヨタ生産方式を真似ようとした,
アメリカの自動車会社が上手く取り入れることができなかった理由はここにある.
近年の情報化による作業のスピード化や,
思考プロセスを整理する様々なフレームワークにばかり触れていると,
いかに楽に効率化するかを考えてばかりいる自分がいる.
そしてそれを促す本が大量に本屋の棚に並ぶこの時代.
「本当にすばらしい経営」というのは,
地味な作業の積み重ねこそが大事であり,それをいかに継続して組織としてやるか.
それが結果的に表面では,輝きをもった成果として出るのだろう.
このことを今回身をもって学ぶことができた.
昼食にいただいたサラダボウルの自家製野菜弁当.
その裏には,多くの地味な作業の積み重ねとそれを取り入れる努力があった.
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