日本における留学生・外国人と日本人との間の情報の格差の存在と影響,
そしてそれに対して私たち日本人がしなければならないことについて書きたいと思う.
先週の金曜日に東京大学の留学生オリエンテーションがあり,
今回国際センターのサポートでそのヘルプスタッフをやらせていただいた.
東京大学は留学生は約3200人在籍している.
しかし,その9割が修士以上の学生であるため,学部で出会うことはほとんどないという.
そして3200人のうちの約3分の1が,私の所属している工学系研究科に所属している.
その一番人数の多い工学系研究科は授業の開始を5月に遅らせた.
そのため,例年では400人規模になるこの新留学生オリエンテーションも
今年は100人規模と、例年より縮小開催の見込みになった.
だが蓋を開けてみると,留学生の参加者は150人を軽く超えた.なぜか.
それは今回のオリエンテーションで放射性物質に関する現状と対策のレクチャーが設けてあり,
それを目当てに新入生でない留学生もぜひ聴きたいと参加しにきたからだ.
多くの留学生にとって,いま最大の関心はやはりこの「放射性物質」だ.
「放射性物質」は安全なのか?大丈夫なのか?
来日してから毎日多くの不安に悩まされている.
特に留学生の中には日本語の読み、書き、話すのがまだできない学生.
まだ日本人の友達ができていない学生が多くいる.
こういった留学生は当然の日本のメディアが発表していることは全て理解できない.
そして,海外のメディアで飛び交う様々な憶測で大きな不安を覚える.
さらに留学生というのは,留学生同士で一緒にいることが多い.
お互いの母国のメディアが発表している内容について話しが始まると,
それはもう負のスパイラル.さらに心配が増すだけだ.
特に来日した留学生自身は日本が安全だと信じても,
母国の親はとても心配し,安全性についての明確な説明抜きでは納得してもらえないとのことだ.
今回,会場でも質疑応答では,多くの質問があった.
「なぜ日本政府は安全と言っているのに,水があっちこっちで売り切れているの?」
「売られている野菜は普通に調理して食べ本当に平気か?」
これに関して私たち日本人も「放射性物質」については,
どこまで安全かは明確にはわかっていない.
いまはただ国が発信している「安全」であるということを信じるしかないというのが現状だ.
実は留学生もこんなことわかっている.
絶対安全かどうかを聞けることを期待してきているわけではない.
彼らが知りたいのはただ一つ.
日本人には共有されて知っているけれど,
留学生である自分達には共有されていなく知らないことがあるのではないか.
日本人として日本に暮らしていると私たちには気付くのが難しいことだと思う.
しかし,私たちは毎日の生活で周囲の人たちやメディアから自然に多くの情報を受け取っている.
NHKや民放でも,様々な原発に関する特集を放送している.しかし,言語は日本語だけだ.
先日のNHKスペシャルでも同時通訳がないことに大きな危機感を覚えた.
私もイギリスに滞在していたとき,狂牛病で世間は一時大混乱した.
あれは危ない.これは危ない.多くの情報が飛び交った.
そのとき一番知りたかったのは現地の人たちの考えと行動だった.
英語に不自由を感じていた私は大きな不安を当時抱いた.
情報の格差は不安を生む.
不安はその国に対する信頼の低下.そして疑いに変わる.
最後には日本離れへ進む.
日本に興味を持ってくれ来日した留学生は大切な学生なのではないだろうか.
また観光立国を目指していた日本が震災後どのようになるかはわからないが,
日本の復興にはまた震災前のように多くの外国人観光客に来てもらうことが必要だと思う.
そのためには,いま日本に滞在している留学生・外国人に対して,
私たちは自分達の知っていることや日本人がとっている行動について,
理解できるように情報を提供することやそれを可能とする場を提供する
ことが重要だと思う.
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